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赤い繻子
ばれりー・ゑばー

第二章 麻薬中毒とオーガズム

 レネは「芋姉ちゃん、痛いの?」と聞いた。「んん、いや、気持ちは」と言ったけど割り込まれて「いい子いい子」と言われた。多分、思わずあたしの「気持ち」は「気持ちいいー」と聞こえた。でも、あまり気にしなかった。麻薬をたくさん飲んだから何も気にしなかった。

 あと三週間の間に三回レネの家まで行ってまた同じ薬を飲ませてもらった。最初は躁転するときだけ飲んだけど一週間の間に小さい悩みでもちょっとだけの緊張でも何でもあったら飲んだ。あとはレネの家にいるときによくその麻薬を大量に食わされた。嫌だとは言わなかったけどラリるときによくレネは親しくなりたかった。そういうラリるときにやりたくないとは言わないけどやりたいとも言わない。嫌いでも好きでもなかった。でも彼女はそういう状態でもやるのが好きだった。麻薬をやる前にそういう状況をロールプレイするのが好きだったけど本当の状況はそんなに楽しくなかった。多分、麻薬の前からのセックスがあったから彼女はあたしも好きだと思っていた。

 終わったらまた「いい子いい子」と言ってあたしの頬を撫でて「楽しかった?気持ちよかった?そりゃあ一番大事なことだよ」と聞いた。オーガズムと麻薬でラリったから「うんん、楽しかった」と言っちゃったけど肌から心までは鈍麻したけど寄り添っていた。十五分後、彼女は鞄から手巻きタバコと味の入っている紙を取って2本のブルーベリーのイメージが入ったタバコを巻いた。タバコの煙は普通の味だったけど舐めずったらブルーベリーをちょっと味わえた。

 あたしは思わず「やめられないなぁー。このタバコは毒が入っても多分、吸う」と言ってタバコを落とした。レネは「芋姉ちゃん、大丈夫なの」と聞いてすぐあたしは「あなたの被害者になるのかしら」と言って「えええー!何言ってんの」と聞かれた。タバコにベッドシーツは穴が開けられて灰が多かった。彼女の目を見て「殺していいよ」と言った。空気はあまり動くなかった。「死んでもいいよ、愛しているから殺させるよ」と言った。彼女があたしを殺したいと思っても大丈夫だった。

 ちょっとあたしの手を触って「芋姉ちゃん、殺したくないよ、一緒にいたいから」と言った。信じられなかった。他意が絶対にあると思った。あたしに「愛している」と言う人はいつも他意があるから彼女も他意抱いているべき。実と近かったけど何かが違って悟らなかった。言う言葉の意味がわかってだんだん涙が出てしまった。悪いことをさせてあげてひどい言葉を言ってしまった。「レネ、ごめんなさい、許してください、あたしはひどい女だ」と言っているときに優しい手に触れた。「芋姉ちゃん、大丈夫だよ、もう許したよ」と言った。今のあたしは何で許される必要があるかわからない。

 朝は恥ずかしかった。昨日エピソードがあってたくさん悪いことをやった。「まだ一緒にいたいのかしら」と聞いた。「なんでそんな事言うの、もちろん一緒にいたいよ」と答えた。レネは手を触って「疲れているようだね。今日はゆっくりしなさいよ。あなたの好きなアニメを見よう」とお母さんみたいに言った。目頭を押さえていたから何も言わなかった。レネは小さなテレビにあたしの好きな「おにいさまへ」を流してくれた。自分がサンジュスト様だと心に描いた。サンジュスト様が本当の人間だったらあたしのお姉さんになると感じた。しかしサンジュストは恋人に薬を盛られて犯されたわけじゃなかった。

 短歌を書きながら「おにいさまへ」を見ていた。   

   「ヒロポンの弾で自殺をしてみたが我が売人の手で助けられた」

   「侍のように死にたい やる前に もう一回キスしてちょうだい」

を書いてしまった。二篇目はレネに見られた。レネは読んで「な~んでまた悲しいこと考えてんの」と聞いた。「もう無理だ。もう一回躁転すると死ぬわ」と答えた。レネは「芋姉ちゃん、何週間薬がなかったの」と聞いた。あたしはレネが知らなかったと思った。「何週間なのかしら」と恥ずかしそうに言った。レネはまたお母さんっぽい声で「明日病院行こうよ」と言った。すぐに恐怖はあたしのこころん入って立った。「イカない、イカない、イカないよ」と叫んだ。レネは「行ってください、アタイのために行ってください、一緒に行くから大丈夫だよ」と言った。また大きすぎる声で「行かせないで、行かせるな」と叫んだ。レネは強くあたしの手を握って「行けばいいよ、ビッキ。行かせないけど行ってほしいよ。元気で居てほしいから」と言った。