父に殴られた。「そういうこと言っちゃだめだよ!なんでそういう悪い事言うんだ?」と父は叫んだ。「負けてほしいから!満州国が大嫌いだから戦争に負けてほしいんだ!」と私も叫んで答えた。父はさらに声を荒げた。「みんなは日本のために何かを差し出さなきゃいけないんだ!それに、お前はいい生活をしているだろ。政治家の息子なんだ、文句を言えないだろう!」とまた叫んだ。「いい生活じゃないよ!何もできない、ここは!友達がいなくて、誰も私のことが好きじゃない。冬が寒すぎて籠もっているみたいな生活だよ!」と返して、私の部屋へ走った。父は私の手を取ったが怖がる私の顔を見ると手を離した。部屋の鍵を閉めて声を出して泣いた。考えずに上着を引っ掛けて、窓を開けて飛び出した。地面にぶつかって足を少し傷めたが、気にもしなかった。行き先は決めずに、ただ道を歩いた。
十二月はとても寒く、上着が足りなかった。路地を見つけると座り込み、寒さで体中が震えていた。何時間も時間を潰したが、家に帰りたくなかった。雪が降り始め、私の隣に静かに積もった。少しの風があって雪片が晩春の桜みたいに舞った。その桜を思うとまた日本に帰りたくなった。懐から鉛筆と手帳を取り出し、考えを短歌に書いたが、何回書いても良い短歌を書けなかったから揉んだ紙を雪の上に捨ててしまった。紙を投げ捨てるのは嫌だったがこんな悪い気分になって屑籠を探したくなかった。
同じ道を歩く別の少年が、三十歩ほど過ぎてから立ち止まり、私の方へ戻って来た。少し私を見つめ、体ごとこちらに向けて「寒くない?」と言った。私は驚いて、暫く考えて、「大丈夫です」と答えた。彼は懐からマッチの箱を出して見せて、「紙はあるでしょう、火をつけてあげるよ。暖かくなるよ」と言った。私はまたしばらく考えて、「ありがとう」と返した。「ちょっと屑籠を探してくるぞ」と彼は言い、私は返事ができる前にもういなくなっていた。十分待ってちょうど「全部は冗談か自分の想像だ」と思ったときに、彼は屑籠を持っていて戻って来た。彼は私の前に置き、「こっち、こっちだよ、紙を入れるぞ」と言った。全部入れ、彼が火をつけた。「他のゴミがあるから火が強くなる、暖かくなるよ、約束だ」と彼が言った。私は火の上で手を出したが、彼は煙管を懐から立派で長い箱と袋を取り出し、楽しげに「わぁー、久しぶりに吸っていないぜ、楽しみにしていたよ」と言った。「え?なにそれ」と私が聞き、彼は「俺のお父さんの煙管だよ、タバコだよ、一服吸わしてあげるよ!吸ってみる?」と彼が言って、箱から同じように立派な煙管を取り出し、マッチ棒を火に入れた。そのマッチ棒は爆発みたいに燃えつき、すぐに彼がタバコを煙管に入れ、火をつけてとても気持ちよさそうに吸った。タバコについてあまり考えたことがなかったが、とても気持ちよさそうだったので、「一服、いいですか?」と聞いた。